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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(オ)1232号 判決 1964年7月16日

上告人

株式会社森市商店

右代表者代表取締役

森真吾

上告人

末広不動産株式会社

右代表者代表取締役

山口正達

右両名訴訟代理人弁護士

円山潔

被上告人

有限会社ハトヤ

右代表者代表取締役

望月明儀

ほか二名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人円山潔の上告理由第一点について。<省略>

同第二点について。

原判決が上告人森市商店と被上告人ハトヤ間の本件仲介斡旋の依頼は合意解除された旨認定していることは判文上明らかであり、また上告人末広不動産と被上告人切刀、同東海林ら間の本件仲介斡旋の契約解除についても、判文上措辞いささか足らないものがあるけれども、同様合意解除された旨の認定をしたものと解されないことはない。しからば、原判決が被上告人らの申立てない一方的な解除権行使の事実を認定したとの所論はその前提を欠き、原判決には所論違法のかどは認められず、論旨は採用できない。

同第三点について。

原判決は本件売買契約が被上告人らの上告人らに対する仲介依頼の正当に解除された後、直接取引により成立したものであることを認定し、上告人らに於て右売買の端緒を与えたとしても、その程度の斡旋行為ではまだ本人間の直接取引による本件売買契約成立について因果関係が存するとはいえない旨を判示しているのであつて、その認定する右事実関係の下に於ては右判断は正当であり、原判決には所論違法の点は認められない。所論はひつきよう独自の見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用できない。

同第四点について。

原判決は本件仲介依頼の解除は被上告人らに於て故意に上告人らを除外する目的でなされたものでなく、また前記第三点について説示したような経緯によつて判示の如き当事間直接の売買契約が成立し、右仲介依頼に関しては報酬金についての特約がなかつた旨を認定しており、その認定は原判決挙示の証拠により首肯できないことはない。そして、かかる事実関係の下においては仲介人たる上告人らが報酬金を請求しうる社会の一般取引観念を認め得ないとした原判決の判断は、肯認できないことはなく、所論経験則違反の違法は認められず、従つて所論信義則違反の主張を容認しなかつたからといつて、原判決には理由不備又は理由そごの違法はない。所論は、ひつきよう原審の認定にそわない事実を前提として原審の適法にした事実認定を非難するか、または独自の見解に立つて原判決を非難するに帰し、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官長部謹吾 裁判官入江俊郎 斎藤朔郎 松田二郎)

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